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###電子図書普及事業　わいわい文庫 寄贈先より④
読むことに困難がある子の世界を広げるわいわい文庫
松江市立島根小学校　いのうえ しょうこ
【写真】松江市立島根小学校、いのうえ しょうこさんの顔写真。

　50周年、おめでとうございます。

　どの学校にもどの教室にも、学びにくさのある子がいることがだんだんと周知されてきましたが、未だに多くの学校図書館では「紙の本」しかない現実が続いています。そんな中で、「知りたい情報に出会う」ことも、「お話に入り込み、心躍らせる」ことも体験できずにいた「読むことに困難がある子どもたち」にとって、貴団体が提供してくださる「わいわい文庫」は、間違いなく大きな希望の光です。

　音の情報があり、視覚的に捉えやすい条件にカスタマイズすることができるマルチメディアデイジー図書に出会って、やっと「もっと読みたい」と言えた子に、何人も出会いました。

　「わいわい文庫」なら、読むことに困難がある子でも、「自分で」「読みたいときに」「読みたいペースで」読むことができます。それは、本来であれば「当たり前」のはずです。だからこそ「読書」は自分の中に深く浸透し、たくさんの喜びと気づきを与えてくれるのではないでしょうか。

　読むことに困難がある子どもたちは、紙の本からスムーズに情報を受け取ることができません。文字を音に変えることに多くのエネルギーを使ってしまう子は、内容をイメージするところまで辿り着けません。どこを読んでいるのかを頻繁に見失ってしまう子は、内容がつながっていきません。結果として、「本に浸る」ことも、「必要な情報にアクセスする」こともできなくなってしまうのです。

　知的障害特別支援学級に在籍していたAさんは、自分の思いをうまく言葉にできずにいました。文字への関心も薄く、読み聞かせは好むものの自分から手に取る本は図鑑ばかりで、好きな生物の写真をずっと眺めていました。そんなAさんがわいわい文庫を自分の端末で読み始めたのは、2年生の冬でした。そこからのAさんの読書へののめり込み方は凄まじく、毎日、5冊も6冊もの本を読み続けました。その姿を見て、「ああ、ずっと読みたかったんだな」と、胸が締め付けられたことを、今も鮮明に覚えています。

　その後、読書が日常の喜びの一つになっていく中で文字の習得も進み、文字や言葉で想いを伝えることもできるようになり、Aさんの世界はどんどん広がっていきました。

　今では、たくさんのジャンルの本に興味を持つようになり、「これ何?」「どういうこと?」と質問しながら読み進めていく姿も見られます。読書がたくさんの可能性の扉を開いてくれたと感じています。

　Aさんのように「自分で読書を楽しめる」ために、わいわい文庫を必要としている子がたくさんいます。どうかこれからも、彼らに「読書の喜び」を届けていただければ嬉しいです。必要な子にわいわい文庫の情報が届くよう、私も微力ながら啓発を続けていきたいと思います。